伝説の道ウォーク(2/5)

昨日(2021.2.5)『伝説から紐解く空海が歩いたルート』の続きを行ったレポートです。

前回は椿堂から切山休憩所までのルートを歩いて確認しました。

その続きとして、今回は切山休憩所から空海ゆかりの生き木地蔵と切山峠(切山越)を経て、田野々までのルートを歩いて確認しました。

 

【切山休憩所⇒生き木地蔵】

現在、切山休憩所から生き木地蔵へは、県道9号線を通って、生き木地蔵の案内板から市道下谷線に入るルートが主になっていますが、今回はまだ歩いたことがないルートを歩くことにしました。

切山休憩所から階段を下りて、市道下川切山線を進み、Y字路で切山キャンプ場へ進みます。

切山キャンプ場は、切山小学校の跡地です。

「ここでキャンプする人いるのかな・・・」

寂しさを感じるキャンプ場を通り抜けた林道の入口に『林道切山線』の案内が設置されていました。

現在の県道9号線が整備されたのは、昭和29年に川之江市が誕生した後のことで、明治初期に作成された地図には、当然のごとく県道9号線はありませんが、市道下谷線が記されていて、林道切山線と同化していました。

この林道切山線が旧道の一つで、もう一つの柴生大櫻から切山へ上る旧道は今も残っているのかどうか分かりませんが・・・

林道切山線は、幅が広めで、整っていれば、とてもいい林道だと想いますが、残念なことに長らく放置されている様子で、瓦礫や倒木、生い茂るススキなどで、歩き難い状態でした。

 

市道下谷線に入って、生き木地蔵の方へ進むと、『生き木地蔵の旧道』の案内が設置されていました。

現在、生き木地蔵へは新たに整備された参道を下りますが、

「旧道があるのなら是非とも歩いてみたい」

と案内につられるように旧道に入りました。

旧道の入口を見ただけで、妖しい気がしましたが、怖い物見たさに任せて進むと、案の定荒れていて、しかも真新しいトラロープが張られている場所では、道が滑落していました。

「これは大変・・・」

と思うも、

「なんとか行けそうだ」

と念のためロープをしっかり握りしめて、一見、足の踏み場のように思える場所に足を踏み出した瞬間、落ち葉の下に道は無く、ロープにぶら下がった格好になり、

「これはいかんわ!!!」

と慌てて超旧な斜面をよじ登るも、落ち葉で滑りまくって、危うく転落するところでした。

斜面の木にしがみついて、なんとか体勢を整えたものの、進むにも戻るにも道は無く、さすがにゾッとしました。

「まさか綱渡りで行けとでも言うのか・・・」

と唖然として、

「こんな状態で旧道の案内を出すなよ!!!」

と思わず恨み節がこぼれだすも、

「いかんいかん」

と恨み節を封じ込めて、ロープより上方の斜面の木を伝うようにして進みました。

なんとか生き木地蔵に辿り着けて安堵に包まれる。

そんな危険な道でした。

 

切山の生き木地蔵は、何度も訪れているので、いつものように合掌礼拝。

これで、空海伝説が残る椿堂と切山を繋ぐ伝説のルートを歩いて確認しました。

 

【生き木地蔵⇒切山峠(切山越)】

切山を訪れた空海は、雲辺寺には上らず讃岐に戻られたのなら、どのルートを通ったのでしょうか?

わざわざ昔の曼荼羅峠に向かうより、このまま切山峠を越える方が理に適っているように思います。

 

生き木地蔵から切山峠へは、まず整備された参道を上って、市道下谷線に入って金見山登山口まで進みます。

県道9号線と合流する場所に生き木地蔵と切山のマップがあり、ここから金見山の登山道に入ります。

登山や山歩きを楽しむ人々が歩いている登山道は歩きやすい道です。

以前、金見山に登った時に歩いているので、その時の印象と重ね合わせながら上りました。

切山峠と金見山方面との分岐点までは問題なく上って来れましたが、切山峠の方へ進んで行くと、道が分からなくなりました。

一見、前は行き止まりに思えて、右に荒れた道があり、方向が違うように思うも、この道しか見当たらないので、とにかくブッシュを越えて進んで行くと、道が途絶えて引き返すはめになりました。

「行き止まりじゃないのかな?」

行き止まりに見える場所、突き当たりの右に道がありました。

その道を上り、また次も行き止まりに見えましたが、左を見ると、

「道のようで道ではないようにも思える」かなり急な坂がありました。

普通に上れる状態ではなく、木や根を掴んで上って行くと、阿讃縦走道に出ました。

ススキの覆われた阿讃縦走道。

以前に歩いたことを思い出し、切山峠が近いことを悟りました。

 

切山峠(切山越)には、田野々への案内が設置されています。

以前、この案内を見て、田野々へ下る道があることを知りましたが、実際に歩くのはこれが初めてです。

 

【切山峠(切山越)⇒林道唐谷線起点(田野々)】

植林された杉林を進み、下り坂が始まると、倒木のラッシュで、なかなか手強い道でしたが、やがて道の状態がよくなって、とても歩きやすかったです。

林道唐谷線と合流する場所に「金見山登山口」の案内が設置されていました。

林道唐谷線に入って右へ、緩やかに下って行くと県道9号線に合流します。

ここが林道唐谷線の起点です。

県道9号線を進んで行くと、やがて萩原寺や雲辺寺ロープウェイに至ります。

 

【林道唐谷線起点⇒唐谷峠】

林道唐谷線の正式名称は、森林管理道唐谷線で、文字通り唐谷峠へ通じています。

今回の『伝説から紐解く空海が歩いたルート』は、林道唐谷線の起点で終了ですが、この林道もまだ歩いたことがないので、この機会に歩いてみることにしました。

起点を出発して柞田川に架かる橋を渡り、緩やかに上って行き、金見山登山口を通過して、さらに進んで行くと、正面に箱罠が設置されていました。

林道に車両が通った跡が残っていて、おそらくここまで車両が入って来ているようです

ここから左側の谷に沿うように上ります。

本格的な上り坂が始まり、倒木などの障害物がほとんど見当たらない林道を上って行くと、やがて県道9号線のガードレールが見え始めます。

県道9号線の脇を通り、県道9号線に合流する場所が唐谷峠です。

愛媛県と香川県の表示があり、明治23年に祀られた地蔵があり、「左いよみち」と記されています。

地蔵の向きがおかしいので、おそらく県道9号線が整備された時に場所を変えられたのでしょう。

明治初期に作成された地図には、唐谷峠を通る道は記されていませんが、明治23年当時には、唐谷峠から伊予に入る道があり、人の往来があったことを示す貴重な地蔵だと思います。

 

唐谷峠に到着して、今回の予定は全て終了となりました。

そもそも今回の『伝説から紐解く空海が歩いたルート』は、昨年の3月に切山を訪れた時、地元の住民から、

「その昔、椿堂から山を越えて下川町の棒賀へ下り、棒賀から切山へ上って生き木地蔵を参拝してから昔の切山峠を越えて田野々へ下り、そして、雲辺寺へ向かう遍路道があった」

とい話を聞いたことがきっかけで、そのルートの検証と調査を始めました。

今回でルートの現状が分かりましたので、撮影した画像とルートマップを合わせて資料を作成し、話を聞かせてくださった住民の方に報告させていただきます。

私としては、遍路道ではなく伝説の道と考えていますが、何か地域のウォークイベントに役立てられたら幸いに思います。

修繕が必要な場所が多々ありますので、『今すぐに』とはいきませんが、切山地域の方々と協力しながら何か出来ればいいですね。

 

今回は、「朝、自宅を出発して徒歩で切山休憩所へ向かい、生き木地蔵、切山峠、林道唐谷線起点、唐谷峠を経て、また自宅へ戻る」という6時間のウォークは、好天にも恵まれて、新たな発見もあり、危うい場所もありましたが、充実した時間を過ごさせていただきました。

無事に全行程を終えることができたこと感謝ですね。